最近中国では、品質のよい中国製品の台頭で、
日本ブランドの価値が下がっているということ
しばしば耳にします。しかし、若い世代の、
特にファッションに敏感な人たちには、まだまだ日本や
韓国の流行や文化に強く影響を受けていて、
「哈日哈韓」という言葉に見られるように、
日本や韓国の流行は若者の間で支持を受けています。
以下では、それらついて、中国の方の意見を
翻訳・編集しまとめたものです。

哈日哈韓族
日本や韓国の衣服を着、音楽を聴き、雑誌を見る、
「日本崇拜」とまで言われる熱狂的な若者を
「哈日族」または「哈韓族」と呼びます。
しかし、これは何も近年始まった事ではなく、
古くは「Made in Japan」のテレビを争って買っていた世代、まさに、日本の経済発展が、その文化の影響を
中国にも大きく与えていた時代までさかのぼります。
現在の中国のGDPのレベルを、当時の日本はすでに
達成していました。今でも、中国で日本のテレビ番組が
報道されないことはほとんどありません。
また、韓国を見てみると、人口は30分の1、
経済規模も中国の40%に過ぎません。しかし、
その経済発展の過程においては、テコンドーが
世界中で一世を風靡したように、その文化も確実に
中国に浸透しました。
日韓のドラマが中国のドラマを圧倒した、と言える時代
もありました。通常、中国の若者が買うのは、
中国語に翻訳された日韓ドラマの海賊版ですが、
海賊版が出ていないものについては、翻訳されていない
にもかかわらず、正規版を買う人も続出した程です。
特に象徴的なのは、水泳の中国ナショナルチームの
羅雪鵑が「私が見ているのはドラマではないのです、
タッキーが見られればそれでいいんです!」
と言ったことです。

現代の若い世代の人たちにとって、
哈日哈韓というのは、「流行を追う」という意味で
使われます。また、40代より上の世代の人々に
とっては、電気製品、カメラ、などの「日韓の製品を
使う」事を意味します。北京大学社会学部教授の
夏学欒教授によると、「中高年世代は若い世代よりも
理性的で、日韓製品の品質を見て、それがいい物で
あるから、それ選択する傾向がある」そうです。
他にも、日韓の芸術・文化も中国の中高年世代に
人気があります。というのも、日韓の文学は、
中国のものに比べてより現実の生活に根ざしており、
人間的で、見ていてほのぼできる、または爽快なもの
が多いからです。
私たちが松下電器の製品を使い、大宇の自動車に
乗る時、その文化も同時に浸透しており、
知らず知らずの内に「哈日哈韓」の仲間入りを
しているのです。

「哈」の由来は、台湾の若い世代の流行語であった
「哈=熱狂的に思うこと」が起源です。
当初はカップルの間で「愛している」という言葉の
代わりに使われていましたが、それが変化して、
「日本や韓国に熱狂的になる人」の事を指すように
なりました。
特に、現在では「盲目的に日本や韓国の若い世代の
流行を追う人」の事を指す事が多いようです。
化粧や髪型、衣服まで、まさに日韓のもの愛する人々は
多く見られます。これは何も、今の若い人だけを
指すのではありません。
今の30代の人々も「東京ラブストーリー」が
流行った時代に、大きく影響を受けてきました。
髪の色が黒から茶色に変わり始めたのもこの頃です。

なぜ日韓のドラマが好きなのか?
なぜ日本と韓国のドラマが中国のものよりいいのか、
ということについて、中国の方の意見を翻訳して 紹介
します。大きく3つの要因にわかれているようです。

1.日常生活を描いたドラマが多いので、親近感が持てる
例えば、堂本剛と深田恭子が演じる「To Heart 〜恋して死にたい〜」には多くの中国人が共感を覚えました。このドラマの中で俳優が演じる悲しみや喜びは、普段の生活の中で私たちも感じるものです。
彼らが演じているのは「見ている人」でもあり、彼らは、テレビのスクリーンでの出来事に自分自身の境遇を合わせて、共感しているのです。主人公の葛藤は自分自身の葛藤でもあり、日常の中で見落としてしまっているもの、声に出せないでいることを、テレビを通して体験することで、普段味わうことのできない心の暖かさを感じられるのです。

2.夢想の空間を提供している
日韓のドラマは、「日常のもの」だからというだけでなく、それが夢想の空間を提供しているから人気があるのです。登場人物が、自立しようとする姿や、自由を求めて葛藤するさま、プレッシャーと戦う姿に共感し、自分もがんばろうという気にさせてくれます。
そういった、日常生活を描くドラマを見ることで、日頃のプレッシャーから開放され、新たな希望を抱くことができるのです。これは、特に、心休まることのない中国の都市部の女性たちにとっては効果抜群です。

3.日韓のドラマのほうが、俳優・女優の選び方が的確
「ロングバケーション」は、中国で日本の映画を見たことのない人に一番オススメのドラマと言われています。それは、それまで中国では、このようなドラマを見た人はほとんどいなかったためです。中国ではそれまで、そのようなドラマが作られたことがありませんでした。

このように、まだまだ中国のドラマと日本のドラマの
間には大きな開きがあります。日本のドラマは、
「日常」を描いたものが多くあります。
しかし、中国はといえば、庶民とはかけ離れた
エリート経営者、ホワイトカラーの話など、大衆とは
かけ離れたものが多いのです。これは、中国がまだ発展途上国であるためにやむをえない部分もあります。
もうひとつの要因は、中国人が一般的に社会的な問題など
を題材にしたドラマを好むという特性があることです。
製作者の側としても、若者のみをターゲットとした
ドラマというのはまだまだ作りにくいのが現状です。
ゴールデンタイムのチャンネル権は中高年世代が握っているのです。また、撮影機材の品質の違いもあります。

他にも、中国と日本の習慣の違いで、日本ではテレビ局が
主催して番組を制作しますが、中国では、
製作者がテレビ局を回って、自分たちで作ったドラマを
売込むのが普通です。いかにコストをかけずに売れる
ドラマを作るか、というのが大命題なのです。
もちろん機材などにお金をかけない事で、
俳優・女優の演技力が上達するという効果はあります。
中国のドラマは日韓のドラマに比べて、雰囲気作り、
照明の使い方などでも劣っている部分かなりあります。

ここ数年の日韓ブームを見ていて思うのは、
流行の最先端の人々から、サラリーマンまで、服装、
アクセサリー、髪型など様々な面で、知らず知らずの
うちに日韓の流行を追いかけているという状況です。
もちろん、「クレヨンしんちゃん」が中国でも爆発的に
人気で、教育委員会から禁止令が出た地区まで
あるように、日韓のドラマが中国の若者の道徳観を
傷つけるのではないか、という論調も多く見られます。
しかし、韓国・日本も中国と同じく、太古中国の
儒教思想の影響で、老人を大切にし、祖先を敬うと
いうよい文化を持っています。今日のドラマは見るに
値しない、と言ってしまうのではなく、彼らが持っている
美徳を学ぼうという姿勢でもいいのではないでしょうか。