上海視察日記
2004/03
 

今回は上海を視察に来られた日本のアパレルの方に、レポートのような形で目で見た情報や、その後調べて見た情報などをまとめてもらいました。上海に駐在している人よりも、感受性豊かに上海が表現できるのではないかと思ったのでとりあげてみました。

1、エリア別比較


●南京東路
 上海一の繁華街。休日の夕方ともなると、ものすごい数の人が繰り出してくる。歩行者天国になっているこの通りは多くの外国人観光客、中国人観光客、地元っ子がいつも行きかっている。土日は渋谷駅前のスクランブル交差点がずーっと一直線に1キロつづく、そんな通り。この両脇には百貨店やレストランがずらりと並び、夜は派手なネオンでギラギラしている。
 ユニクロ、上海最古の国営デパート第一百貨、いつも地元の若い人でにぎわっているランドマーク、イトキンの自社ビル、香港系ブランドの路面店(「GIORDANO」、「BALENO」、「METERS BONWE」、「JEANS WEST」←どれもユニクロのようなお店、商品はかなり安い)などがある。全体的には安いお店が多く、ユニクロは香港系の量販カジュアルブランドと比べると少し高い。日本と同じか若干安いかというくらい。対して、「GIORDANO」、「BALENO」、「METERS BONWE」、「JEANS WEST」という香港系のカジュアルブランドはどれも同じような店構え、同じような商品で、ほとんど差が感じられない。ソックス一足¥140〜¥170、カラーバリエーションのあるTシャツ¥500←3枚買うと¥1400、プリントTシャツ¥980、ジーンズ¥2,300〜¥3,100など。
イトキンビル(a.v.v、MK、iimkなど)は全体的に値段が高く、人通りの多い南京東路にあっては、ずいぶんと閑散としている。ターゲットも富裕層狙いという感じ。

●南京西路
 南京西路は高級5つ星ホテルや高級ブランドが入っているデパートが多く集まるエリア。上海のヘソ、人民公園を境に西側に位置するエリアで、外資系ビジネスマンや高額所得者を相手にしたショッピングゾーンとなる。一般の人にはまず無縁。ディオール、シャネル、フェンディ、ルイ・ヴィトンなどがテナントとして入っている「プラザ66」を代表として、 Max Mara、Kenzo、Ballyなどのブランドのほか、スポーツショップ、雑貨店、CD店、レストランが入る「CITIC SQUARE」がある。それぞれ中は吹き抜けで、回廊式にテナントを一望することができる。 CITIC SQUAREの1階と地下にはスターバックスやマクドナルドもあり、外人(白人多し)ばかりが目立つ。 ここ南京西路にある「梅龍鎮伊勢丹」は年収2万5千元(約¥350,000)以上の25〜40歳の女性が主な顧客で上海で所得が上位5%に入る顧客を対象に品ぞろえを考えている。しかし、中国人一般的には評判はそこまで高くないとのこと。顧客は持っているが、やはりマスは捉えられていないのが現状だからだ。日本のブランドはコルディア、23区、MKなど。カットソー¥7,000、JK¥13,000など。
 この南京西路エリアには今年9月日本商品の専門店「日本城」(ジャパンタウン)がお目見えする予定。企画営業面積は7,000平方メートルで、日本風のファッションとアクセサリーを扱う店舗140軒がこれに参加することになっている。これらの店舗はぞれそれの個性を競い合い、商品の価格は¥4,000〜¥12,000に設定し、25〜35歳位の新しいファッション感覚の持ち主である女性をターゲットとし、多品種少量でカジュアル中心の出店が計画されている。同時期9月(5月に合弁会社設立)オリーブ・デ・オリーブが上海にて販売を開始する予定になっている。
 同じく「日本城」より一足早く2004年5月、南京西路「韓国城」もオープンする予定。韓国のファッション、バック類、靴や帽子、そして化粧品等数十種類の商品を扱う。商品レベルは韓国の中高級品で、服飾、化粧品、家電売り場から美容整形病院、レストランも設ける計画。


●徐家匯
 ここには、交差点に面していくつもの新しくて大きなショッピングセンターのビルがあり、大勢の人々でいつも賑わっている。 徐家匯には毎日80万人の買い物客が訪れるが、そのうち約70%は若者で、いくつかのガイドブックには「上海の渋谷」というような事も書かれており、いつも大変な賑わいを見せている。徐家匯での一番人気は港匯広場。ここは徐家匯の商業ビルでは最大の広さを誇るショッピングモール。吹き抜けになっており、広々ゆったりとした館。 地下鉄徐匯駅の前に並ぶ面積130,000平方メートルのデパート、娯楽、買い物、飲食、観光の一体型百貨店で、250のブランドテナント、ITの自社ブランド「izzue.com」も出店。少しはずれにあるが、新天地店に比べると、一般の人でも入りやすい雰囲気。他ブランドと比べると商品内容も違うし、照明も暗くオシャレな雰囲気。販売員も、上海の一般的なブランドでは3人いたら3人ともまるでユニホームのように上から下まで同じ服を着ているのに対し、「izzue.com」では同じ服を着た販売員は一人としていなかった。(=日本と同じ)
 次にローカル系百貨店の匯金百貨へ行った。通路が狭く、各ショップがせりだしてきているような作り。一階でbossiniがイベントスペースを使い、招待セールを行っていた。Tシャツ¥560など。ものすごい勢いで人が群がっており、行列もできていた。ノリとしてはラフォーレセール時にワゴンに群がっている女の子達といえばわかりやすいだろうか、中国ではこういう「わかりやすい」ものに人が群がる。前日も化粧品のワゴンの安売りに若い子が群がっていた(化粧っ気なし)。見栄っ張りだが、セールが大好きである。


●淮海路
 淮海路エリアは上海のショッピングエリアでは一番有名なエリア。エリア自体も広く、 高級路面店が多く、華亭伊勢丹、上海三越、プランタンなどもあれば、一般の女の子達が行く自由市場、地元ファッションの路面店などもある。 伊勢丹に東京スタイルのスタイルコムが新しくオープンしていた。商品構成は全くのキャリアで、トレンチコート¥36,000、スカート14,000、パンツ¥17,000、と一部の高額所得層をターゲットにした品揃えだった。
 淮海路で現地消費者に一番支持されているのがマレーシア系「百盛(Parkson)」デパート。百盛は特に若い人に人気。理由は淮海路の地下鉄の駅の真上にあるのと、近くに多くの観光客と多くの若い子が行く自由市場があるから。百盛の前にいつも若い人が群がっているのは、ここが待ち合わせのメッカとして使われており、常時、人で混雑している。百盛の成功理由は顧客ターゲット戦略が明確であり、伊勢丹などと比べるとヤング向け、地元向けのブランドが多い。現地消費者に手の届く値ごろな価格設定と国内小売業者よりも幅広くて良質な品揃えがなされている。人が多いためか、百盛の前ではよく化粧品などのイベントが開催されていたり、テレビ局が街角インタビューをしていたりする。
 百盛内にイトキンのiimkなどもある。ロゴTシャツ¥3,000、ショートトレンチ¥7,000(綿オックスみたいな)。MKクランプリュス、ドレープのカットソー¥2,800など。 アバウトの売り上げは月150万くらいだろうか。人件費は4人〜5人で12万〜15(一人3万と仮定)。週末ともなると、各デパートの集客は平日の数倍に膨らむ。日本以上に平日と週末の集客の差が大きいのを感じる。
 百盛近くの自由市場(ニセモノ市)はアジアならどこにでもあるニセモノ市といった雰囲気。上海を訪れる観光客の多くはここに立ち寄る事が多い。歩くたびにロレックスやヴィトンなどニセモノを売りつけてくる。あとはNIKEとかDIESELとかのニセモノなども多数。ここは、ニセモノ以外にもちゃんと洋服が売られていて、質は良くないが、百貨店よりもデザインのバリエーションは豊富で、若い女の子達はこういう場所で洋服を買う事が多い。カットソー¥700程度。また、日本のブランドのコピー商品と工場横流し品を売る店があった。レイカズン、プードゥドゥ、オリーブ、23区、iimkなど。本物はネームと品質表示を切ってあり、「売れそうだから」という理由で別物に日本のネームをつける事もあるそうだ。コピー商品。「イトキン」→「イトキソ」は笑える。
 淮海路のパークソンの横の通り。ここは地元向け路面店が多く、形もデザインも色も豊富で、ベーシックなものが多い百貨店では見かけないデザインものもあった。ここも、コピー商品を扱う店も多く、自由市場や後述の香港名店街と似たような感じのお店が多いが、中に日本のヤングカジュアルのB品や横流し品、コピー商品を置く店があった。この通りには3件の日本ブランドを集めたショップがあった。ナイスクラップ、オリーブ、レイカズン、プードゥドゥ、マジェスティックレゴン、ヴェールダンス、オゾック、アズノゥアズ、リップスター、シップスなどなど。こういった商品を完全になくすのは難しい事だ。だが、発見し次第、工場に注意し、一つ一つ地道に解決するという会社の姿勢が非常に大事なのだと思う。
※中国の方にお聞きした所
淮海路百貨店家賃150〜200万円ほど
出店するならまずは百貨店がよいのでは?百貨店はイメージが立てやすい。お客様にとってわかりやすい。上海では、たとえば、青山や代官山の”はずした”路面店は市場の特性上、オシャレとしてまだ受け入れられにくい。


●その他( その他、ニセモノ市、香港名店街などの現状)


●七浦路服装市場
 上海に中心部からは少し外れたところに、ひとつの建物の中に小売と卸専門のショップがひしめているところがある。 淮海路の自由市場やソウルの東大門市場と雰囲気は同じで、上海の学生や一般の若い子はこういう場所で商品を買い、活気に満ち溢れている。もちろん、質、デザインとも日本のものとは比較にならないが、カットソー¥500くらいから。ものによっては掘り出し物も。日本のB品のクオリティでも売れるような市場だ。卸の方は小売のような店構えで、対象が違うためか、フロアは閑散としている。シャツ上代¥3,000、卸値は¥800だった(交渉次第でもっと落ちる)。


香港名店街
 人民広場という上海のヘソにあたる地下にあるショッピングモール。ここも、香港系のブランドや、安いものが売る店がごったがえしており、若い上海の子達がこぞっていた。上述の事務所近くの建物と、自由市場よりは洗練されているものの、ごちゃまぜ感と安さは共通。カジュアルからギャルっぽいものまで幅広く対応していた。所得が3〜4万ほどの上海では、ここが若い子達の「実情」を表しているのだなと思った。上海の小売は住み分けがきちんとできていて、百貨店は所得がある人、多くの10代〜20代前半の人は百貨店で見て、安い市場で買う、といった感じです。家賃は10坪ぐらいで1月14万くらい。売り上げは平均50〜100万くらい。


新天地
 新天地は、昔ながらの雰囲気を残しつつ、その内部は斬新でテーマ性の強い装飾によって施されたおしゃれなレストランやショップが数多く存在。新天地は現在と過去の上海をミックスしたような不思議な空間。「IT」とITオリジナルの「b+ab」と「izzue.com」をリサーチした。ITの品揃え。ANNA SUI、コムデギャルソン、COSTUME NATIONAL、D&G、DIOR HOMME、DIRK BIKKEMBIRG、D SQUARED、EMILIO PUCCI、HELMUT LANG、MARCJACOBS、MARTIN MARSIELA、MIU MIU、SEE BY CHLOE、SONIA BY SONIARYKIEL、ツモリチサトなど。それぞれのブランドをハコとして構えていれば、ラックという形で設けている。現在(3月中〜3月下旬)はファイナルセールという形を設けてはいるものの、お客様の入りは少なく、厳しい感じだった。まだITの品揃えに対して消費がついてきていないという状況が伺える。
南京西路同様、外人(とくに白人)目立つ。南京西路と新天地に行くと急に白人率が増える。


正大広場(スーパーブランドモール)
 アジアで最も大きいショッピングストアーの一つで地上10階 地下3階で構成。地下に外資系スーパーLOTUSや映画館もある複合施設。映画は今頃「ターミネーター3」がやっているなど、日本や欧米と比べると少しタイムラグがあるようだった。「ロードオブザリング3」は大々的に広告していた。スターバックス、ケンタッキー、味千ラーメンなど人気飲食チェーンも入っている。しかし、人はガラガラだった。7階で世界のブランドの安売りイベントを開催していたが、商品もガラガラで活気もない。フロアで比べると入っているほうではあったが。購買地ではなく、ビジネスや観光地として場としての性格が強い。東方明珠テレビ塔を中心として、観光客にアピールする場。LOTUSは混んでいた。普通の商店やコンビ二よりも安く、周りに大型ディスカウントスーパーがないからだろう。