中国には「柴・米・油・塩・醤油・酢・茶は日々の生活に欠かせないものである」という
古い言葉があるように、お茶は生活の中で欠かすことのできないものです。
お茶を飲むこと自体を楽しんだり、健康のために飲んだりと、その目的も様々です。
中国では昔から、季節ごとに適したお茶ということが言われてきました。「漢方」では、
「春の花茶」、「夏の緑茶」、「秋の青茶」、「冬の紅茶」と言われています。

「春の花茶」
春は陽気で暖かく、万物に息吹を与える反面、“倦怠感”、“慢性的な眠気”などの症状が
出てきやすい季節です。しかし、花茶を飲むことでこうした影響を取り除くことができると
言われています。花茶は涼しげな甘い香りと、発散効果を持ち、体から冬の寒さを追い出し、“陽気”を体内に取り入れることで、春に出てくる諸症状を解消してくれます。
花茶は、その鮮やかな花の香りをお茶の中に集めることで、よりいっそう茶のうまみを
引き出しています。これは、茶の原料を炙る時に、花の出す香りを茶が吸収するためです。
花茶の中では清らかな香りと、爽快な味の「ジャスミン茶」がもっとも有名です。
高級花茶の場合は、まず3グラムをスプーンでとり、グラスに入れます。
その後90℃前後まで冷ましたお湯を注ぎ、ふたを閉めます。
その時、香りが逃げないように気を付けます。2,3分たったらOKです。
後は、花茶の芳香を楽しんでください。
 

「夏の緑茶」
夏は、暑く、汗をかいてもまだ体内に熱がこもり、体力を必要以上に消耗したり、
食欲を失ったりしがちな季節です。こういう時には緑茶が最も適しています。
緑茶は「未発酵」であるために、冷たい性質を持ち、熱を抑えてくれます。
また、喉の渇きを潤し、食欲を促進することで、夏ばての解消にもなります。
他にも、口内の消毒や、軽度の“胃潰瘍”ならば迅速に治癒させる効果もあると言われています。栄養成分も比較的多く、血管の硬化を防ぐなどの効果もあります。
緑茶は香りが澄んでいて、苦味と、味わった後に爽快感があります。
特に有名なのが、浙江杭州の「獅峰龍井」で、きれいな色とすがすがしい香りが特徴で、
「中国緑茶の最高峰」と言われています。
他にも、香りが強いことで知られる江蘇省太湖の「ピールオチュン」や、
すがすがしい香りで知られる安徽省黄山の「毛峰」などがあります。
緑茶の入れ方としては、普通の緑茶なら90℃前後のお湯を、
高級なお茶ならばその清らかな香りを逃さないために80℃前後のお湯を使います。
蓋は必ずしもする必要はありません。
 

「秋の青茶」
秋は木々が枯れ、乾燥する季節です。“漢方”で言うところの「秋燥」にあたります。
この時期には、烏龍茶などの「半発酵茶」が一番適しています。色は褐色で、
緑茶の爽快感と、紅茶の渋い濃厚な味の両方を持っています。その性質も、
熱くも寒くもなく、肌や喉を潤し、目を覚まし、体内に蓄積した熱を取り除く事で、
季節の変化に体の調子を合わせやすくなります。
普通見かける烏龍茶は“福建省”や“広東省”、“台湾”のものがほとんどです。
中でも特に、福建省北部の「武夷岩」の烏龍茶、福建省南部「安渓」の鉄観音が有名です。
烏龍茶は種類が非常に多く、有名な「鉄観音」を始め、「奇蘭」、「梅占」、「水仙」、
「桃仁」、「毛蟹」などの種類があります。
烏龍茶を入れるときは、100℃まで熱したお湯で茶を出し、
それをコップに移して飲みます。
 

「冬の紅茶」
冬は動物が冬眠に入り、大地は冷え、寒さで体の機能が低下する季節です。
漢方では「冬になると万物は冬眠に入り、万物の生体機能はその活動を抑えようとする。
養生の道は、寒さを凌いで、暖かくすることである」と言われています。
そういう季節には紅茶が最も適しています。濃い茶葉は“温かい”性質を持ち、
人の体に陽気を呼び込むとされています。また、紅茶は寒さへの抵抗力を強め、
消化を促進し、油っこい食べ物をスムーズに流してくれます。
紅茶は発酵茶に分類され、茶の表面が酸化して赤い色になっています。
発酵後、葉の表面には紅色の化合物が作られます、これはお茶の“黄素”、“紅素”、
“茶褐素”と言われ、その一部分は非常に水に溶けやすい性質を持っているために、
紅茶は鮮やかな紅色になります。
伝統的な紅茶としては、「湖紅」、「宜紅」、「寧紅」、「福建省」の紅茶、
「台湾」の紅茶、などで、特に安徽祁門県のキーマン・ティーは世界的に有名です。
キーマン・ティーは「工夫」、「砕茶」、「片茶」、「ダスト」の4等級に区分され、
上級品はほぼ輸出用で、国内消費はごくわずかと言われています。
欧州では「中国茶のブルゴーニュ」ともいわれ、特にイギリスでは珍重されており、
英国王室ではエリザベス女王の誕生日の日に、キーマン・ティーを飲むという
伝統があります。また、中国の国家首脳が海外訪問する際、キーマン・ティーを
贈り物とする習慣もあるそうです。
紅茶を入れるときは、沸騰させたお湯をそのまま注ぎ込み、蓋をすることで、
香りを閉じ込めます。後は、ストレートで飲むなり、レモン・ミルクなどを入れて飲むなり、自分の好みに合わせて楽しみましょう。イギリスでは、「アフタヌーンティ」が有名で、
ミルクティーを飲むのが普通ですが、中国でも、砂糖や牛乳、
ゴマを入れて紅茶を飲む地方もあります。
 
 
店内に所狭しと並ぶお茶
 
同じ種類でも、普通、一級品、高級品などの種類があり、
値段も3〜4倍以上の開きがあります
 
茶を買いに行くと、味見をさせてくれます。
写真に写っているテーブルは、
水を流すと下まで流れていくようになっていて、
中国茶独特のお茶の入れ方を楽しむことができます。