アパレルブランド 4/28
 
今回は、上海で13店舗、中国全土で36店舗を持つ「Lily」というブランドの統括マネジャーと主席デザイナーの李倫さんのお二方に、中国でのブランド戦略、出店戦略に関するお話を伺いました。
現在設立から4年目の若いブランドで、ターゲットは22〜30歳のOL(ある程度購買力のある層)になります。出店はすべて百貨店で、年間の売上は約500万$(約5億5千万円)です。

Q. 百貨店でLilyさんの商品を見せていただきましたが、他のブランドも含めて、ベーシックなものが中心で、日本で支持を集めているようなファッションとは違うという印象を受けましたが、それについてはどうお考えですか?
A. 確かに、Lilyの商品は、日本で売られている商品と比べるとベーシックなもの、オフィシャルなイメージのものが多いといえます。これは、明らかに、日本と上海の消費者の嗜好が違うためだと思います。中国でも、香港や台湾に行けば、ファッションの感覚は日本に近く、ベーシックなものよりもセンスのよいものが好まれます。
その理由のひとつは、日本や香港では比較的購買力の高い、大学生や20代前半の女性が、上海ではほとんど購買力を持っていないことにあります。上海の百貨店に入っているブランドで、大学生や、比較的収入の低い20代女性をターゲットにしているブランドはあまりありません。
もうひとつの理由は、上海には七浦路という卸売市場がありますが、ここではファッションセンスの高い商品を含め、あらゆる種類の衣料品が、500円〜1200円の価格帯で売られており、大学生や購買力の比較的低い若い世代はここで買い物をします。中には、日本のブランドや中国で人気のブランドのデザインをコピーした商品も多く、デパートで商品を見て回った後、ここに来て買う人が多いと言われています。
デザインのコピーも早ければ2週間ほどで出回ってしまいますので、多くのブランドはコピーされやすい商品を避ける傾向にありますし、消費者も簡単にコピーされるものを買おうとは思いません。わざわざ百貨店で買う人たちは、素材へのこだわりも持っており、ファッションよりもオフィシャルなものを、若さよりも大人の女性の魅力を演出するものを求めていると思います。
もちろん、ONLYやETAMのように、ファッショナブルで若い世代の人気を集めているブランドもありますが、Espritを始め、一般的にはベーシックなものが人気を集めています。また、ベネトンもベーシックな商品が多いのですが、値段が高いので、必ずしも上海で支持を得ているとは言えません。

 
Q. 日本のブランドに関してはどういうイメージをお持ちですか?
A. 日本のブランドと言えば、特定のブランドというよりも、「伊勢丹」や「イトキンビル」がまず思い浮かびますが、一部のお金持ちの支持派受けているようです。イトキンのMKブランドなどもそれなりの支持を得ていますし、我々も、今後伸びるブランドのひとつではないかと思っていますが、拡大戦略という観点からは、香港系企業などのような勢いはありませんね。日本企業に一般的に言えることだと思いますが、伸びる可能性が十分にあっても、慎重すぎて可能性を潰してしまっているような印象があります。
 
Q. 日本企業が出店するにあたっては、どのような形で進出するのがいいと思われますか?
A. やはり、中国市場に関するノウハウを持った、我々のような会社と、なんらかの形で協力関係を気づくのが最も確実な方法だと思います。従業員教育などは、日本のノウハウだけではコントロールが効かない部分もありまし、中国の消費者に関するマーケティング調査などに関しても、実際販売経験のある所と協力してやるのが、最もてっとりばやい方法だと思います。
 
Q. 将来の目標としているブランドはありますか?
A. 中国のブランドで言えば、やはりデザインとしてはONLY、ベーシックなものとしてはESPRITを目標にしていますが、海外のブランドで言えば、ZARAです。
 
Q. 出店に当たって気をつけておられる事などはありますか?
A. 一つは、百貨店のレベルとターゲットを意識すること、二つ目はそれから安売りをしない事です。百貨店のレベルは、プラザ66のようなハイクラスショッピングモールから、伊勢丹などの比較的高級な百貨店、太平洋やパークソンなどの中級百貨店、国営の百貨店などの中級以下の百貨店と選択の幅はかなり広がります。中級以下の百貨店は値引き率も非常に高く、ブランドイメージの観点から言えば、日本のブランドにはあまりお勧めできません。また、商品にベーシックなものが多いため、ブランドのイメージをうまく伝えられるよう、内装などにも気を付けています。
ブランドイメージに関して言えば、月間90万部を発行している「上海服飾」などに広告を掲載したり、各ブランドを集めた上海市主催の展示会にも積極的に参加しています。
 
Q. 家賃や人件費などは、1店舗当たりどれくらいかかりますか?
A.

家賃ではなく、納入掛け率制度を取っている所が多いのですが、うちの場合、年間1店舗あたり約140万円の家賃を支払っています、人件費は、一人/10uくらい雇っているのですが、給与はひとり約2万円、また、売上に対し1%のインセンティブを与えています。

 
Q. コピー対策などはどのように行っておられますか?
A. コピー対策は、我々にとっても非常に大きな問題のひとつです。実は、我々も現在、コピー商品に関してひとつ係争中の案件があります。コピー商品に対しては、法的措置も辞さない強い態度で臨むべきです。日本ブランドの中には、まだ上海に進出してきていないにも関わらず、すでに大量にコピー商品が出回っているブランドも多くあります。工場との関係を緊密に築くと共に、日頃からコピー商品に対する対応策をひとつひとつ取っていくことが非常に大事です。
. インタビューを終えて
. 第1印象は、理知的なマネージャーと美人デザイナーというお二方でしたが、話は上記以外の様々な内容にも及び、3時間あまりの長いインタビューとなりました。最後まで非常にわかりやすい中国語で、丁寧に説明して下さいました。今回特に興味深かったのが、なぜ百貨店ではカジュアルな商品が少ないのかという点です。購買力のある上海のOL女性が会社にも着ていけるような、ベーシックな商品を望んでいるということは、今後日本や韓国ののブランドモールが誕生する中で変わっていくものなのかもしれません。