ファッション雑誌「Ray」
 

今回は中国の3大雑誌のひとつと言われている「Ray」でシニア・エディターの王萌稚さんにお話を伺いに行きました。友達の紹介という事もあり、仕事の方面よりもプライベートな話の方が多くなりましたが、その中でもおもしろい話を色々と聞くことができました。
(Ray中国のホームページ:http://www.rayli.com.cn/


Q. どういう経緯で、現在の雑誌社で働かれるようになったんですか?
A. 私の実家は南京で、もともと南京電視台(テレビ局)で上海の流行やお店などを紹介していました。2年半前に南京から上海に出てくる決心をして、上海でもファッション関連の仕事をしようと思っていた時に、たまたま「Ray」の上海事務所が開設したばかりで、人を探しているという事だったので、それに応募したんです。
 
Q. 上海のオフィスには日本の方もおられるんですか?
A. 全員中国人です。ただ、毎月記事を編集した後、記事を日本でチェックしてもらわなければいけないので、担当者が出張でよく日本に行っています。
 
Q. 日本のファッション雑誌は基本的に、日本の記事を翻訳したものと、中国で作ったものの二つがありますが、「Ray」の場合はその比率はどれくらいですか?
A. 今のところ、半分が日本を翻訳したもの、半分が中国で作った記事になっています。
 
Q. 日本系のファッション誌を見ると、そのほとんどが、日本の記事と中国の記事の間にかなりレベルの開きがあると思いますが、「Ray」の場合はあまり違和感がありません。なぜでしょうか?
A. それは、やはり経験の差だと思います。2001年4月に北京事務所設立以来、現在では100人を超えるスタッフが働いています。上海も、編集部のスターティングメンバーは私を含め2人だったのが、現在では7人まで増えました。記事の編集に関しては、日本にひけを取らない実力が十分についてきました。
Q. 雑誌はどれくらい売れているんですか?
A. 当社では年齢や収入によって、4つにターゲットを分け、雑誌を発行しているのですが、合計で100万部くらいです。最も売れているのは「瑞麗服飾美容」で、約60万部ほど売れています。ターゲットは18〜25歳です。
 
Q. 日本の記事を翻訳するときに、日本のブランドを紹介したりする事もありますか?
A. 日本の記事を中国語に翻訳するときは、値段やブランド名などの情報はほとんど公表しません。公表しても、手に入れることは難しいですし、あまり意味がないからです。また、あったとしても、「瑞麗服飾美容」がターゲットとしている18歳〜25歳の層は購買力がないので、ほとんどの人は日本のブランドを買う事はできないと思います。あくまで、日本の最先端の流行を伝え、どうそれを解説するかを重視しています。
Q. 中国では中国系の雑誌よりも、日本や欧米のものが多いですが、日本の雑誌と欧米系の雑誌では、どんな所に違いがありますか?
A. 欧米系の雑誌であれば、1ページに大きな写真を「ど〜ん」と載せてもOKが出ますが、日本の雑誌ではそうはいきません。1ページに6枚、8枚と写真を使うのが普通なので、編集が大変な分、情報の細やかさでは日本系の雑誌の方が圧倒的に上だと思います。
Q. 南京から出てこられて、上海をどう思いますか?
.A. 上海には、南京にいた頃からよく取材で来ていたのですが、外国の文化を受け入れる素養の高さや、経済の発展のスピードは他の地域とは比べられません。いわゆる富裕層がショッピングに行く場所には、必ず海外のブランド品がありますし、情報も色々と集まってくるので、仕事や買い物をするには非常にいい環境だと思います。本社のある北京に行った時は、経済を中心とする上海とは、人も街の雰囲気も全く違うなと思いました。やっぱり北の人は、なんでもおおざっぱで、細かいことは気にしない人が多いんです。お金を中心に動く上海の人を北京の人は嫌いますが、上海の人も、あまり北京の人をよくは思っていないようです。上海語という言葉の隔たりも大きく、独特の文化を形成しているような気がします。
また、上海に住んでみて一番驚いたのは、上海のお金持ちが、“超”金持ちだという事です。一般的な人が月収2000元〜3000元で生活しているのに、3000元〜5000元の高級衣料品の売れ行きが非常にいいという話を聞くと、貧富の差というか、生活レベルの差がありすぎて、何かかたよっているように感じます。主人は台湾の出身ですが、台湾ではこれほどアンバランスではないと言っていました。
 
Q. 上海の今後についてはどう思いますか?
A. 上海は街の外観や、金持ちに焦点を当てると、すでに先進国となんら変わりはないようにも思えます。しかし、一般の人は、まだまだ道徳や礼儀の面で他の先進国との大きな開きがあります。例えば、レストランやその他のお店で店員の態度がすごく悪かったり、逆に客のマナーがすごく悪かったり。今後は、もっとこういった所の教育に力を入れていかなければ、先進国との本当の意味での差は埋まらないと思います。例えば、主人の友達の台湾人と接してみてわかったのは、台湾人は非常に礼儀正しく、マナーがいい人が多いという事です。台湾の場合は、特に日本の影響が大きいのかもしれませんが、上海の人達もこれを見習っていかなければいけません。
Q. 会社が目標にしている事は?
A. 現在、上場を目指していて、もうすぐ上場できるのではないかと思います。また、現在はウェブサイトの方も充実してきましたし、今後は、モデル学校の設立や、テレビ番組の編集にも積極的に関わっていこうとしているようです。雑誌として、すでにある程度立場が確立し始めたので、今後はそれ以外の方面にも手を広げていくようです。
  インタビューを終えて
. 王萌稚さんのような、中国の女性と台湾人の男性のカップルはあまり見かけません。というのも、中国は女性の立場が強く、台湾の男性は比較的「掃除・炊事・洗濯」ができない人が多いので、あまり中国の女性にはもてないのだそうです。ご主人は有名な泰康路で衣料品店をやっておられる方で、テレビ局にいた時に、取材に行ったのがきっかけで知り合ったそうです。台湾人は、中国人に比べてどこかしゃべり口調や雰囲気もおっとりとしているのですが、王萌稚さんは台湾の方のようなやさしい口調でお話になっていました。ウェイトレスに対して、やさしく「謝謝(シェシェー)」というのが印象的でした。(ウェイトレスに対して礼儀正しく「謝謝」という中国人はほとんどいません。)
 
 
王さんおすすめの3品。エビがぷりぷりして絶品です。
米粉と言われる、米でできた麺(?)
なにやらたくさん入ったこれは、実はお店で一番人気だそうです