FAIR WHALE
 

今回は「FAIR WHALE」という中国で急成長ブランドの顧問をなさっている吉田さんにお話を伺いました。吉田さんは、もともとアパレルの企画会社で働いておられたのですが、ある企業の上海進出を支援する形で2年前に上海に来られました。現在は、「FAIR WHALE」というブランドを扱っておられるのですが、レディースブランドもスタートし、今月だけで改装を入れると70店舗の新店舗オープンになるそうです。今までも、月平均20店舗ペースで店舗展開をしておられ、日夜、中国全土を駆けめぐり、販売員の教育やディスプレイなど、各地で指導にあたっておられます。


Q. 吉田さんのような仕事をしておられる日本人は、上海でもめずらしいと思いますが、具体的にどのような事をやっておられるのですか?
A. 「FAIR WHALE」ブランドの出店の際に、ディスプレイの指導をするのがメインの仕事ですが、僕自身が元々販売員をやっていた事もあるため、販売員の教育にも関わっています。他にも、カタログ作り、・ファッションショーのディレクション、季節ごとのコーディネートマニュアル作り、展示会のブースのコンセプト作りなどもやっています。
 
Q. 今の会社にはどういう形で入ることになったのですか?
A. もともと僕が上海に来たのは、ある日本ブランドの出店支援がきっかけだったのですが、その当時、1店舗目をオープンしたばかりの「FAIR WHALE」の社長から、「FAIR WHALE」の指導に来てくれないかと誘われたのが今の会社に入るきっかけになりました。
 
Q. FAIR WHALEの社長はどういう方ですか ?
A. 社長は、まだ30歳くらいの若い方で、感覚的にも非常にわかりあえるものがあります。中国で40歳以上の方というと、こちらのイメージがほとんど伝わらず、話にならないことが多いのですが、社長の場合は当初から、僕がイメージしているコンセプトを、すぐに理解できる人でした。また専務も23歳くらいの若い方で、感覚的にわかりあえる人です。どちらにしても、中国という国で、こうした感覚のマッチングがうまくいったという事は大きかったと思います。
 
Q. 中国企業の展開の仕方は日本と随分違うようですが、そこら辺は今の会社を見ていてどう思われますか?
A. とにかくスピードが命です。当社の「FAIR WHALE」が今月だけで70店舗をOpenし、すでに設立2年目にして200以上の店舗を展開してきたことからも、そのスピードの速さがわかって頂けると思います。「考える暇があるなら動いた方がいい」と言う格言があって、出店コストは日本と比べてもさほど高くなく、出店してダメなら次の手を打つ、という気持ちでやらないとダメです。「手堅くやる」という手法は、今の上海では通用しません。
Q. 中国でブランドを展開していくにあたって、何かよい方法はありますか?
A. まずは上海の有名な百貨店やストリートに看板となる店を持つことです。地方から来た人達は、まずどの百貨店にどんなブランドが入っているかでそのブランドを評価します。ですので、上海では直営店でやった方がよいでしょう。逆に、地方での展開は、どれだけ質の高いフランチャイズと契約を結べるかでその成否が決まります。そういう意味で、地方の代理店とのコネクションは非常に大切ですね。

また、ブランドイメージですが、雑誌広告は高いわりに、ほとんど効果が期待できませんね。それよりも展示会でのプロモーションに力を入れるなどした方がいいと思います。当社の場合、北京で毎年大きな展示会があるのですが、そこで大きなブースを借りて、大々的にプロモーションをやっています。前回は、かなり大がかりにやりまして、ブース内にスターバックスを持ってきたりと、3日間で総額2000万円もかかりました。その効果は十分にあったと思います。
 
Q. 各地方に指導に行かれて、中国人販売員や販売の状況についてどう思われますか?また、これだけの急な店舗展開にどうやって指導に当たっておられるのですか?
A. 地方の販売員の方たちは、非常に優秀な人が多いという印象があります。日本の販売員と比べても全く見劣りしない、それどころか日本の一般的な販売員よりも優秀な人もたくさんいます。特に、地方では有名ブランドの販売員や店長というと、それなりの地位と給与が与えられますので、本人たちのモチベーションもすごく高いんです。(とは言っても上海などと比べると給与が低く、月給1万円くらいが普通です。上海では2〜3万円くらいが平均です。)
ただ、上海の販売員は全く違っていて、教育を十分にしないと、相変わらずお客様が来ても挨拶をしない、おしゃべりをするという人は頻繁に見られます。またすぐにやめる人も多いです。これは、上海では販売員という職業が、地位と給与が低いというイメージがあるので、いい人材が集まらないせいではないかと思います。どちらにせよ、販売員の教育は重要項目です。

当初はすべての店舗がオープンするに当たって、自ら駆けつけ、指導に当たっていたわけですが、 最近では店舗数が急激に増えていますので、とてもひとりではやっていけず、7人の専門スタッフを各地に派遣し、指導してもらっています。僕は重要なポイントだけを押さえて指導に行っています。出店にマニュアルを作りましたので、それに従ってやってもらえばスタッフにやってもらっても、間違いはありません。とは言っても、今月だけで70店舗オープンというスピードですから、忙しいのに変わりはありません。

以下、今月(9月)のスケジュールですが、見て頂ければ全国各地を飛び回ってるのがわかっていただけると思います。
<スケジュール>
1日〜2日 長沙
3日〜5日 大連
8日〜10日 西安
11日〜13日 宣昌
15日〜16日 北京
22日〜25日 ウルムチ
26日〜28日 武漢

さらにこの間、上海でも5店舗Openの仕事をしていますので、もう大忙しです。
Q. 日本ブランドが上海に進出するにあたって、価格の設定の問題がありますが、日本と同じ価格で売って、はたして売れるのでしょうか?
A. 「FAIR WHALE」でも、高い方のブランドでは、メンズのTシャツで400元〜500元(5600円〜7000円)くらいで設定していますが、それで十分売れています。それを考えると、日本の方が思っている以上に中国には金持ちが多く、上位数%だけを見ると、日本の上位数%よりもお金持ちが多いかも知れません。日本と同じ価格設定でも売れない事はないと思います。あとは、ブランドのイメージをどう構築するかでしょう。立地や、ディスプレーが非常に重要です。「FAIR WHALE」を見てもらえばわかりますが、ディスプレーを非常に大事にしています。一般的には、日本の感覚で言えば、ちょっと派手かな、と思うようなディスプレーが多いかも知れません。ユニクロでも、中国では決して低価格ではありませんので、それなりのディスプレーをやらないと売れません。当初は、日本と全く同じディスプレーでうまくいかなかったと聞いています。
Q. 出店費用についてはいかがですか?什器などはどうしておられるのですか?
.A. 出店費用は総じて低いと思います。人件費が安いので、損益分岐点を超えるのは難しくありません。だから、とりあえず出店してみてダメなら撤退しようという事ができるんだと思います。
マネキンをはじめ、什器はすべてオリジナルで、こちらでデザインしたものを工場で作ってもらっています。オリジナルと言っても、日本と比べるとかなり安上がりなので、それほど負担にはなりません。内装などに関しても同じ事が言えます。
Q. 上海でもすでに10店舗展開され、今年中に20店舗にまで増えるという事ですが、上海にあえて出店する意味はなんですか?
.A.

上海に出店することはブランドのステータスでもあり、広告塔のようなものでもあります。「FAIR WHALE」の場合、上海の一流百貨店は大体押さえていますし、淮海路のメインストリートに路面店もOpenしています。

Q. 地方での展開についてはいかがですか?
.A. 地方での展開は代理店を通じてやっているのですが、大連で春節のセールスの時に、1日で50万元(約700万円)という、凄まじい売上げを達成した店があります。大連の5店舗で、月当たりの売上げが合計500万元(約7000万円)で、上海でも1店舗の月あたりの売上げが、5〜10万元くらいなので、その人気振りがうかがえると思います。
  インタビューを終えて
. 吉田さんは東大阪の出身で、すごくざっくばらんにお話を聞かせていただきました。吉田さんは、「FAIR WHALE」のアドバイザーをやっておられるだけでなく、最近オープンした久光百貨店(SOGO)でも日本ブランドの進出支援をやっておられたりと、色々なところで活躍されておられます。お忙しい所、時間をとっていただき貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。